そうだ、弁護士さんに聞いてみよう

そうだ、弁護士さんに聞いてみよう
毎週火曜日8:35~



福岡県弁護士会は「市民と共に」という目標をかかげ、福岡県内19か所に法律相談センターを開設しています。悩み事があればなんでも気軽に弁護士さんに相談してみましょう。

法律相談センター 0570-783-552 (ナヤミココニ)

第17回:2012年11月27日放送分 テーマ「弁護士会による中小企業支援」

ご出演:池田耕一郎法律事務所 池田耕一郎先生

Q:中小企業の経営者がおさえておきたい経営上のポイントについてうかがいます。企業の経営はお金の出し入れのバランスが大切ですが、その意味で、日頃から経営上の収支を細かくチェックすることが大切なようですね。
A:経営をする以上は利益を上げないといけなければならず、収支のチェックは当然のことと思われるが、実際、事業者から相談を受けると、顧客の獲得とか販路の拡大に目が行きがちで、意外と日々の収支、月ごとの収支のチェックが出来ていないと感じることがある。

Q:収支のチェックに使う時間は後回しになりがちですよね?
A:日々、考えなければならないことがありすぎて、難しいところだとは思うが、きちんとした見直しとかバランスを考えないで資金繰りが苦しくなるケースも多く、融資制度を探したり、窓口に相談に行く経営者は多い。しかし、資金繰りが苦しくなった時こそ、日常の経営を見直す良い機会である。

Q:取引相手の素性や経済的信用状態をきちんと確認することも大切ですよね。
A:取引を開始し、その後、相手からお金を払ってもらえなかったとか、契約を守ってもらえなかっという相談は多い。

Q:契約書を交わすとき、きちんと内容を理解して印鑑を押しているのかという点も大事ですよね。
A:かつては契約書を作らないまま取引をして問題が起こるケースが多かった。いまは契約書はかわすものの、内容をきちんと読んでいないケースが多く、後から大きな損害を被るケースもある。

Q:具体的にはどのようなケースがありますか?
A:例えば、電子看板を設置したが、集客が見込めないので契約を取り消したいという相談があったが、そう簡単に取り消せるものではない。契約というのは本来、簡単に取り消せないためのものである。

Q:専門家の立場から事業承継に関するアドバイスはありますか?
A:社長の個人的な能力や信用でうまくいっている会社は多い。そのため、子どもや信頼する従業員に事業を継がせたいが、それによって企業の体力が落ちるのではないかと恐れ、なかなか事業承継を進められないというケースも多い。しかし、準備の遅れがかえって会社の運命を左右することもありえるので、まだまだと考えている経営者の方も、しっかりと基盤を固めて引き継ぎたいと思ったら早いうちに専門家のアドバイスを受けた方がいい。

Q:中小企業金融円滑化法が来年3月に期限切れとなりますが、この点についていかがでしょうか?
A:金融円滑化法と言ってもピンとこない人もいるかもしれないが、要するに融資受けた際、元金をしばらく据え置きにしてもらったり、毎月の返済金額を下げてもらったり、返済期限を繰り延べしてもらった人が、来年以降、元金の返済がはじまるというような状況に陥る。
とくに、現時点ですでに返済が苦しい方や返済額が上がれば資金繰りが苦しくなることが想定される方は、ギリギリになって相談するのではなく、早目に弁護士のところにいってどうしたらいいかアドバイスを受けた方が良い。
そういったときには是非、ひまわりほっとダイヤルを活用してほしい。

Q:利用するにはどうしたらいいですか?
A:全国統一の電話番号にかけると、折り返し、相談を担当する弁護士から連絡が入る。その上で、日程を調整し、弁護士の事務所で面談のうえ相談できる。現在、初回の相談料無料というキャンペーンを実施している。

第16回:2012年11月20日放送分 テーマ「弁護士会による中小企業支援」

ご出演:池田耕一郎法律事務所 池田耕一郎先生

Q:今日は中小企業が海外展開する際の法的支援についてうかがいます。
最近、よく企業の海外進出という話題を耳にしますね。
A:身近な所で海外にお店を出したいとか、商品を売りたいという相談が多い。
 
Q:企業じゃなく、個人でも海外で展開したいと考えている人も増えているようですね。
 以前でしたら海外に進出するのは大企業だけといイメージがありましたが、最近はそんなことないようですね。
A:国内需要が低迷していたり、インターネットの普及、情報の広がりによって海外が身近になったという事情もある。海外市場を開拓することで国内事業を活性化している事例もある。最近、身近な企業から海外にお出店したいとか、海外に販路を見出したいとい相談を良く受ける。

Q:海外での事業展開、海外企業との取引となると、日本での企業活動と同じように考えているとトラブルに見舞われることもありそうですね。
A:まず、法制度が違うのと、商習慣も違う。取引先の企業の信用情報を集めるのも難しいので、トラブルに見舞われる企業も増えている。

Q:その企業自体が海外に進出していなくても、海外の企業と取引をする事例も増えているようですが、そういった企業からの相談などもあるのでしょうか?
A:たとえば、商品や材料の代金を送金したけれど品物が送られてこないとか、海外からいきなりよくわからないファックスが届いたとか、言語の壁もあるし、契約書を交わさずに取引を始めたとか、よく知っている人の仲介で取引が始まったから大丈夫だと過信してトラブルに陥ることもある。

Q:国内での取引の場合ではそれほど問題にならないようなことでも、海外の企業との取引の場合は軌道に乗るまでのあいだ、専門家の助言をあおぐなど、慎重を期したほうがよさそうですね。
A:こまめに弁護士に相談して契約書の中身を見てもらうことも大切。

Q:海外での事業展開、海外の企業との取引、関心はあっても二の足を踏んでしまう経営者も多いのでは?
A:海外展開に関心はあるけれど、何から手を付ければいいかわからないこともある。弁護士は普段からそういった相談を受け、いろんな方を紹介したりもしているので、いったん弁護士に相談して頂くのもいいと思う。

Q:海外展開を目指す中小企業を支援するパイロット事業の実施候補地として福岡県が選ばれたそうですね。
A:日本弁護士連合会では海外展開を目指す中小企業のために、未然にトラブルを防止するとか、トラブルに見舞われた場合の対応を助言するという事業を立ち上げようとしており、そのパイロット事業の実施地として福岡県が選ばれた。福岡県弁護士会でも中小企業の海外展開を法的な観点から支援するプロジェクトチームを立ち上げた。

Q:中小企業の海外展開を支援するプロジェクトチーム。心強い味方となってくれそうですね。
A:福岡県弁護士会としてもその期待にこたえたいと思っている。毎月一回会議、勉強会を開いたり、中小企業の海外展開を積極的に進めている地場の金融機関や、国外との貨物流通を手掛ける会社を招いての実務講座を開いたり、外国の新聞記者に来て頂いて国外の経済状況に関する報告会など、実務面で役に立つような研究を進めている。

第15回:2012年11月13日放送分 テーマ「弁護士会による中小企業支援」

Q:中小企業の経営者が陥りやすいトラブルにはどのようなものがありますか?
A:事業をしていると、とかく契約書というものに関わる機会が多いが、実際は契約書に慣れていないことが多く、きちんと内容を読んでいないケースも多い。契約の相手側をよく知っていたり、いろいろな事情で、確認をせずに簡単に印鑑をおしてしまい、あとで大きな損害を被ったという相談も多い。

Q:最近はリース契約にまつわる相談も多いようですね。
A:最近多いのが二重リースの契約。ホームページの契約のつもりでリース契約を結んだら、中身はパソコンだったりソフトの契約だったりすることもある。ホームページについて、その後の更新をしてくれるものと思って契約したのに、ホームページ製作会社が更新もせず、連絡をしたらいなくなっていたケースも多い。
 
Q:事務所などの賃貸借を巡る相談も多いとか?
A:出ていくときになって、原状回復を求められ、どこまで復元するかで相談されたり、逆に店舗や事務所をかしている大家さんの側から、賃料を払ってもらえないとか、使い方が悪いので出ていってもらいたいという相談も多い。

Q:契約など企業を経営していくうえでは、法律行為を行う企画も多いので、経営者として最低限知っておかなければならない法的な知識もあるわけですね。
A:どんな問題でもすべて弁護士に依頼するわけにもいかないので、日常経営のために少なくとも必要な知識は備えておいて頂きたい。そういう意味でも日頃から気軽に弁護士に相談することが大切だと思う。

Q:ほかにはどのような相談がありますか?
A:売掛金の回収など。売り上げが上がってもそれに見合うお金が入ってこないと企業は成り立たない。ところが、毎月請求書を送っても、払いますと言いながらなかなか払ってくれないとか、いつの間にか連絡がとれなくなったり、相手のお店に行ったらもぬけの殻とかいうケースも多い。取引を開始するときに相手の素性とか、経済的な信用状態をキチンと確認しておくことが大切。
ほかには取引先が倒産したケースや、労働問題にまつわる相談などもある。契約書が無いからあきらめてしまうケースもあるが、たとえ契約書が無くても、注文書であったり、受注の書類、ファックス・メール等いろんなものが証拠となっていくので、常日頃からそうした証拠を保管していくことが大切。

Q:事業を始めるには企業経営に必要な法的知識を事前に身につけておくことも大切ですね。
A:創業段階だとどうしても資金調達や、お客さんの獲得といったことに意識が向きがちだが、最初に融資を受けるときのお金を借りるときの契約がどういった内容なのかとか、賃貸借契約の内容、リース契約の内容を最初の段階できちんと理解することが大切。

第14回:2012年11月6日放送分 テーマ「弁護士会による中小企業支援」

ご出演:池田耕一郎法律事務所 池田耕一郎先生

Q:中小企業の数はいま、どれくらいあるのでしょうか?
A:中小企業は全国で420万社、九州・沖縄だけでも48万社ある。企業数としてわが国の企業全体の90%以上、雇用でも7割近くを占めている。また、中小企業には個人でお店をしている人も含まれる。

Q:いま、国の施策などでも「中小企業支援」ということがクローズアップされていますが、それだけ中小企業の現状が厳しいという認識があるのでしょうか?
A:しかしながらリーマンショックの影響から回復しきれない中、2011年3月11日に見舞われた東日本大震災により、直接の被災地域だけでなく、全国の中小企業が多大な影響を受けた。日頃相談を受けている中でも九州や福岡の企業でも痛手を受けているところは多い。
 
Q:そうした中、日本が復興を成し遂げるには、中小企業の力が必要だと?
A:中小企業が元気になると、その地域が活力を取り戻し、まちが復興して地域経済が活性化していく。そのことによって日本経済の再建にもつながる。

Q:事業をしている人はどんなときに弁護士さんに相談するといいでしょう?
A:企業の経営は取引、会社組織の運営、労務問題等、すべて法に基づいて運営されているので、何かが起こったときはもちろん、日々の企業の経営の中で、例えば新たな契約を結ぶとか、売掛金がなかなか入ってこないなど、一見些細なことと思われることでもこまめに法律の専門家である弁護士に相談したり、助言を受けることが大切だと思われる。

Q:弁護士さんというと、裁判を起こされたとか、経営がダメになるというトラブルが起きたあとに相談に行くというイメージがあるが、日頃から気軽に相談できる存在だと考えたほうがいいんですね?
A:日常的に弁護士との接点を持つことで、紛争の発生を未然に防止したり、紛争が発生した場合でも法的ルールのもとで適正・迅速かつ実効的な解決・救済が図られることが期待される。

Q:弁護士会による中小企業支援の取り組みとして「ひまわりほっとダイヤル」というものもあるんですよね?
A:弁護士会では2010年4月に中小企業の経営者の方への相談窓口として、ひまわりほっとダイヤルを開設した。今までは気軽に弁護士に相談する体制が整っていなかったので、弁護士による法的サービスを気軽に受けられるシステムを作ろうということで、日本弁護士連合会と各地の弁護士会が協力して、窓口を開設。

Q:具体的な利用法を教えてください。
A:このひまわりほっとダイヤルは、中小企業の経営者が心配ごとや悩み事をかかえたときに、全国統一の電話番号に電話をすると、最寄りの弁護士会の窓口職員が応答し、相談申し込みを受け付け、一両日中に相談担当弁護士から電話がかかってくるので、そこで日程を調整し、弁護士の事務所で相談を実施するというものである。これまでのような弁護士会の法律相談センターでの相談実施方法から一歩踏み出したシステムである。

Q:これは電話相談ではなく、弁護士の事務所での相談ということですね?
A:そうです。事業者の方にはご足労頂くが、電話での聞き取りでは正確なアドバイスができない。資料を持ってきて頂いてお互い顔を突き合わせて相談するのが大切。

Q:相談料はいくらくらいでしょう?
A:30分5250円が原則だが、現在、初回相談の無料キャンペーンを実施している。

Q:弁護士が法的な観点から中小企業の経営に関わることは社会全体にとっても重要なことなんでしょうね。
A:雇用でも7割近くが中小企業。新たな産業の創出や地域経済の活性化という観点からも大切。取引社会という面からみても、「下請法」や「独占禁止法」といった法律の理解が深まることで公正な取引も達成できると思います。

Q:困ったことがあったらまずは弁護士さんに相談してみると。
A:そうですね。是非、事業者の皆さんにそうした意識を持って頂きたい。