そうだ、弁護士さんに聞いてみよう
毎週火曜日8:35~
福岡県弁護士会は「市民と共に」という目標をかかげ、福岡県内19か所に法律相談センターを開設しています。悩み事があればなんでも気軽に弁護士さんに相談してみましょう。
法律相談センター 0570-783-552 (ナヤミココニ)
第21回:2012年12月25日放送分 テーマ「相続問題」
ご出演:福岡エクレール法律事務所 春田久美子先生
Q:遺産分けでもめないためにはどうしたらいいのでしょう?
A:遺言書を作るのが一番いいと思われる。
Q:遺言書を作っておくとどういう点がいいのでしょう?
A:例えば、法律上相続権が無い人、内縁関係にあるパートナーに遺産を分けたい場合などにも有効。
Q:遺言書って、どうやって作ればいいんですか?
A:遺言書には大きく分けて二つある。ひとつは自分で作る自筆証書遺言というもの、もうひとつは公証役場で作る公正証書遺言というもの。
Q:最近は遺言書を作るキットなどもありますね。
A:自筆証書遺言は紙と鉛筆があればどこでもだれでも簡単に作れるメリットがある。しかし、法律上、遺言書には厳格な規定があり、日付などひとつでもミスがあると、遺言書全体が無効となってしまうので注意が必要。最近はパソコンを使うケースもあるが、これも無効となる。
Q:確実に自分の気持ちを残そうと思ったら、専門家に相談したほうがいいですね。
A:自筆証書遺言も結構ですが、それで本当に大丈夫かどうか、専門家に目を通してもらうことをお勧めする。
Q:遺言書を作る際、ほかに気をつけるべきことはありますか?
A:まず、遺言書を作成したこと、保管してある場所を家族に知らせておくことが必要。それから内容にも気を付ける必要がある。例えば、自分の遺産をある人にはあげて、別の人には全くあげないという気持ちがあったとしても、法律で最低限の取り分が補償されている場合があるので、後にトラブルを招いてしまうことがある。
Q:遺言書を作るメリットはどんなところにあるのでしょうか?
A:最低限のことに気を付ければ、その家族の実情に見合った誰もが納得できるような遺産分けができるという強みがある。
Q:遺言書は最後のラブレターとも言われているそうですね。
A:その方の家族に託す最後の意思と言われている。いろんな思いを込め、弁護士など専門家の意見を聞きながら作って欲しい。
Q:最後に相続税というのは、遺産がいくらくらいから発生するものなんですか?
A:基礎控除額を越えるかどうかで相続税を納めるかどうかが決まる。現行の制度の場合、相続人が3人いたとすると、5000万円に1000万円×3と計算し、8000万円を越えなければ相続税は必要ない。
第20回:2012年12月18日放送分 テーマ「相続問題」
ご出演:福岡エクレール法律事務所 春田久美子先生
Q:遺産の分け方にはいくつかの方法があるんでしたよね?
A:話し合いで解決できればこれで終わる。話し合いがうまくまとまらなかった場合、家庭裁判所で行う調停という手続きをとる。調停でもまとまらない場合、最終的に審判という手続きをとる。
Q:先生はこれまでに数多くの、遺産分けのお手伝いをされてきたと思いますが、スムーズに話しがまとまるケースと、話しがこじれてしまうケース、どちらが多いのでしょう?
A:残念ながら、スムーズにいかないことのほうが多い。
Q:どんなことでもめることが多いのですか?
A:家族の歴史、感情のもつれが相続問題を巡って表面化することが多い。遺産分けというのは基本的に、亡くなった方が持っていた財産を分けるというものだが、例えば、兄だけ家を建てるときにお金を出してもらったといった不公平感だとか、自分が亡くなった方の財産を増やすのに寄与したといった主張をする方が多い。
Q:それぞれ言い分があるでしょうから、話しをまとめるのも大変ですね。
A:通る言い分もあるし、そうでないものもあるので、うまく感情をほぐしながら説明していくのが大変。
Q:遺産分けに影響するものとしてはどのようなものがあるのですか?
A:特別受益といって、生前に相続分の前渡しを受けていたと評価される場合がある。例えば、住宅の購入資金や学費を特別に出してもらっていたといった場合、その額を遺産にいったん組み入れて再度分配することがある。それから、財産を増やすのに貢献したという主張もあって、その場合も考慮して分配の方法を決めることがある。
Q:逆に、こういうものは遺産分けに影響しない、というものを教えて頂けますか?
A:特に多いのが、晩年、その人の介護をしたとか、お世話をしたのでその分を考慮してほしいという主張が多いが、基本的には遺産の分配には影響しない。
Q:お墓や仏壇の面倒をみるとかいうのは分配に影響あるのでしょうか?
A:これも遺産分けには影響しない。
Q:不動産の評価などでも、もめてしまうことが多そうですが?
A:そこが結構大変。不動産の評価方法自体にもいくつか種類がある。固定資産税の評価額で決めるか、相続税を考える際の路線価を使うか、あるいは業者に査定してもらうかなどの方法がある。
第19回:2012年12月11日放送分 テーマ「相続問題」
ご出演:福岡エクレール法律事務所 春田久美子先生
Q:遺産分けをするとなった場合、まず何をしたらいいのでしょう?
A:まずは相続人の範囲を確認することから始める。亡くなった方が生まれてから亡くなるまでの関係する戸籍をすべて調べて、どんな相続人がどこに住んでいるのか、人数や場所などを調べる。中には隠し子がいたとか、昔、養子に出された兄弟姉妹がいたということが戸籍を調べることによってわかることがある。
Q:子どもとか配偶者とか、どの範囲までが相続の対象となるのですか?
A:例えば奥さんと二人のお子さんを残して男性が亡くなったとすると、奥さんが半分、子供は4分の1ずつを相続することになる。奥さんはいるけど子どもはいないという夫婦の場合、亡くなった男性に兄弟姉妹がいる場合、奥さんが4分の3、残りの4分の1を兄弟姉妹間でわけることになる。奥さんも子どももいないで親が存命の場合、親がすべてを相続する。
Q:相続人が確定したら、次に何をしたらいいのですか?
A:遺産の全容を調べる。不動産、動産(現金・預貯金)、有価証券の有無、借金などを調べる。
Q:中には遺産と勘違いしがちなものもあるようですね?
A:生命保険金を貰った場合の扱いについて相談を受けることが多いが、保険金の受取人を指定してある場合はその方固有の財産となるので遺産分けの対象には含まれない。死亡退職金といって、会社から支給される場合もあるが、配偶者を受取人とする取り決めなどがあった場合についても同様である。
Q:どうやって遺産を分けるのですか?
A:まずは「話し合い」。相続の権利がある人同士で何をどうやって分けるか、法律どうりに分けるか、そうしないのかを話しあって決める。例えば、残された遺産が自宅などの不動産だけであった場合、不動産の持ち分をもらうのか、その分のお金をもらうのかなどを話し合う。
Q:亡くなった方の銀行の口座に残されている貯金などはどのような扱いになるのでしょう?
A:金融機関の実務では、名義人の方が亡くなったと分かった場合、払い戻しができなくなる。払い戻しをしようとすると、相続人すべての方の印鑑と印鑑証明書を持ってくるよう求められる。
Q:遺産を相続するという場面に直面したとき、どういったタイミングで弁護士さんに相談するといいのですか?
A:前もって相談するのは難しいが、先ほどのように故人の預金の払い戻しができなかったりして、葬式代が不足するなどして、あわてて相談に駆け込んでくる方も多い。遺言書を作るなど、前もっての準備もできるので出来ればそうした方がいよい。あとは話し合いがうまくいかなかったり、遺産の調べ方がわからないという相談も多い。
第18回:2012年12月4日放送分 テーマ「相続問題」
ご出演:福岡エクレール法律事務所 春田久美子先生
Q:遺産とか相続というと、うちはそんな資産なんて無いから…と、ひとごとと思いがちですが、実はそうでもないようですね?
A:資産の多寡に関係なく、相続は皆に関係があります。
Q:いざということを考えて、どの銀行にどれだけの預金があるとか、あそこの証券会社にこれだけの株式があるとか、そういったことを配偶者や子どもたちに伝えておいてくれるといいんでしょうけど、そんなケースばかりでもないですよね?
A:家族が無くなったとき、故人がどこにどんな財産を持っていたのか、銀行にはどういう口座を持っていたのかわからないというケースがとても多い。
Q:これはやはり、事前に伺っておいたほうが良いのでしょうか?
A:聞きづらいことですが、どの銀行にどの程度の預貯金口座を持っているかとか、株はやっていたかとか、自宅以外の不動産など、普段の何気ない会話から遺産の全容がわかってくるケースが多い。
Q:それから、遺産といってもプラスのものばかりではないんですよね?
A:意外と見落とされがちだが、銀行や消費者金融からの借入金、連帯保証人になっていた場合の保証人としての責任、あるいは住宅ローンの債務なども相続によって引き継ぐことになる。
Q:仮にマイナスの遺産があった場合はどうしたらいいのでしょう?
A:住宅ローンの場合はほとんどの方が団体信用保険に入っているので、実際の負担は無くて済む。しかしほかの借金や保証債務などは原則引き継ぐので、負担できない場合は相続放棄という手続きをとる必要がある。
Q:相続を放棄するには、どのような手続きが必要なんですか?
A:基本的に3ヵ月以内に家庭裁判所に行き、書類を提出するという手続きが必要となる。
Q:3ヵ月という、相続放棄の期限が過ぎたあとに、借金などマイナスの遺産があると分かった場合はどうなるのでしょう?
A:実際にそういうケースは多い。間に合うケースもあるので諦めずに相談してほしい。それからそもそも相続を放棄するか受け継ぐか、ゆっくり考える時間がほしいというニーズもあり、こうした場合は熟慮期間を延ばす手続きをとることもできる。